「決算」や「会計」と聞くと、少し専門的で難しいイメージがあるかもしれませんね。
でも実は、会計の考え方はとてもシンプルです。中でも「財務会計」は、会社の経営状況を株主や銀行といった外部の関係者に伝えるための「成績表」のようなもので、社会で非常に重要な役割を果たしています。
この記事では、財務会計の基本的な考え方を、株式会社の仕組みから紐解いていきます。この記事を読み終える頃には、経済ニュースがより身近に感じられるようになるでしょう。
会社の仕組み:なぜ会計が必要?
財務会計の役割を理解するには、まず「株式会社」がどのような仕組みで成り立っているかを知ることが近道です。
株式会社は、事業に必要な資金を多くの人々から集めるために「株式」を発行します。
- 株主(出資者/オーナー): 株式を購入することで会社に資金を提供する人々。会社の「所有者」であり、経営のプロに会社の運営を任せる(委託する)立場です。
- 経営者(経営の専門家/受託者): 株主から資金を預かり、その運用を任された(受託した)専門家。取締役などがこれにあたります。
このように、株式会社では資金の出し手(所有者)と経営の担い手(経営者)が分かれている点が特徴です。この「所有と経営の分離」こそが、財務会計が不可欠である理由につながります。
企業会計の2つの側面:内部向けと外部向け
企業会計は、その報告先によって2つのカテゴリーに分類されます。
① 管理会計(内部向け)
社内の経営陣が見るための会計情報です。「今後の経営戦略をどう立てるか」といった内部の意思決定に活用されます。社内向けの資料なので、形式に決まりはありません。
② 財務会計(外部向け)
株主や取引先など、社外の関係者(利害関係者)に開示するための会計です。法律などで統一されたルールに基づいて作成されます。この記事では、こちらを詳しく見ていきます。
財務会計が担う3つの重要な役割
では、外部に公表される財務会計には、どのような役割(機能)があるのでしょうか?ここでは3つの重要な役割を紹介します。
役割1:情報提供機能 ― 合理的な意思決定をサポートする
投資家や金融機関といった社外の利害関係者が、投資や融資などの判断を合理的に下せるように、客観的な情報を提供する役割です。
例えば、ある企業の株式を買うべきか検討する際、投資家は財務諸表(決算書)を見て、その企業の収益性や成長性を分析します。もしこのような公式な情報がなければ、人々は不確かな情報で判断するしかありません。財務会計は、信頼性の高い判断材料を提供するという重要な使命を持っています。
役割2:説明責任履行機能 ― 資金の運用結果を報告する
経営者は、株主(委託者)から託された資金をどう動かしたのか、その経営活動の結果を報告する責任があります。この「受託者としてのアカウンタビリティ(説明責任)」を果たすための機能です。
経営者は、財務諸表という形で「株主の皆様からお預かりした資金で事業を行い、このような成果が出ました」と定期的に報告します。これにより、株主は経営者のパフォーマンスを評価できるため、企業の健全なガバナンスが保たれます。
役割3:利害調整機能 ― 関係者間の対立を調整する
企業の活動には、異なる立場の人々の思惑が関わります。例えば「配当を増やしてほしい株主」と「返済を優先してほしい債権者(銀行など)」の考えは、時に対立する可能性があります。
財務会計は、法律などの共通ルールに則って資産や利益の額、分配可能額などを計算することで、こうした関係者間の利害の衝突を調整する役割を担います。特定の誰かの意見に偏るのではなく、公平な基準で分配可能な利益などを算出することで、関係者間の無用な紛争を防いでいるのです。
まとめ
財務会計の3つの役割を振り返ってみましょう。
- 情報提供機能: 利害関係者が合理的な判断を下すための情報基盤となる。
- 説明責任履行機能: 経営者が株主に対し、資金の運用結果を報告する責任を果たす。
- 利害調整機能: 公平な計算に基づき、関係者間の利害の衝突を調整する。
このように、財務会計は単なる数値の記録ではなく、企業の公正な活動を支え、経済社会の円滑な運営に貢献する、なくてはならない仕組みなのです。
【理解度チェック】
1.財務会計の目的とは何か、財務会計の3つの主要な役割(機能)を含めて、簡潔に記述してください。
【解答例】
財務会計の目的は、企業の経営成績や財政状態を、株主や債権者といった社外の利害関係者に報告することです。その目的を達成するため、以下の3つの主要な役割を担っています。
1つ目は、情報提供機能であり、利害関係者が投資などの意思決定を合理的に行うための、客観的な情報を提供する機能のことです。
2つ目は、説明責任履行機能であり、経営者が、資金の委託者である株主に対して、預かった資金をどのように管理・運用したのかを報告する責任を果たす機能のことです。
3つ目は、利害調整機能であり、株主や債権者など異なる立場にある関係者間の利害を、公平な会計ルールに基づいて算出された資産・負債・純資産・収益・費用の額・分配可能額などによって調整する機能のことです。
これらの役割を通じて、財務会計は企業の健全な運営と経済社会の発展を支えています。
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